最近の保険金不正請求に関する裁判例の解説
開講日:2021/12/7 19:00~20:00(講義終了後、質疑応答有り。最長20:30まで)
講 師:
弁護士 大野 澄子 先生
申込締切日:11月30日(火)
地方自治法上の地縁団体Xが所有する2階建ての集会場において、研修会及び宴会が終わった直後、建物内部の2箇所から出火した事案において、Xの役員の故意による出火かどうかが争われた事案。1審判決は、故意免責の成立を認めず、Xの請求を認容したが、控訴審判決は、Xの役員ら5名が施錠して建物を退出した直後の火災であり、動機(利用上の難点がある建物を改修することができる)の存在も認められるとして、1審判決を破棄して故意免責の成立を認め、Xの請求を棄却した事例。
2.大阪地方裁判所令和3年7月2日判決(未公刊)
保険契約者Xの管理する実家(無人の空き家)において、夜間、建物内部から出火した事案。保険会社は、①保険の対象たる建物の保険契約書上の住所地番が実際の住所地番と異なるので、保険対象の特定ができていない、②複数箇所への着火が疑われる放火である、③Xは生活保護を受給中であるのに本件建物を所有していることを福祉事務所に開示していない、④Xは鍵の所在や保険加入について警察等に事実を告げていない、⑤Xは解体業に従事し、過去に多数の賠償責任保険金を請求しているが不審点が多い等主張したところ、裁判所は故意免責の成立を認め、Xの請求を棄却した事例。
※ その他 1、2件程度の火災保険金不正請求疑義事案について解説する予定です。
3.質疑応答
【講義項目】
1 福岡高等裁判所平成31年3月27日判決(未公刊)
地方自治法上の地縁団体Xが所有する2階建ての集会場において、研修会及び宴会が終わった直後、建物内部の2箇所から出火した事案において、Xの役員の故意による出火かどうかが争われた事案。1審判決は、故意免責の成立を認めず、Xの請求を認容したが、控訴審判決は、Xの役員ら5名が施錠して建物を退出した直後の火災であり、動機(利用上の難点がある建物を改修することができる)の存在も認められるとして、1審判決を破棄して故意免責の成立を認め、Xの請求を棄却した事例。
2 大阪地方裁判所令和3年7月2日判決(未公刊)
保険契約者Xの管理する実家(無人の空き家)において、夜間、建物内部から出火した事案。保険会社は、①保険の対象たる建物の保険契約書上の住所地番が実際の住所地番と異なるので、保険対象の特定ができていない、②複数箇所への着火が疑われる放火である、③Xは生活保護を受給中であるのに本件建物を所有していることを福祉事務所に開示していない、④Xは鍵の所在や保険加入について警察等に事実を告げていない、⑤Xは解体業に従事し、過去に多数の賠償責任保険金を請求しているが不審点が多い等主張したところ、裁判所は故意免責の成立を認め、Xの請求を棄却した事例。
※ その他 1、2件程度の火災保険金不正請求疑義事案について解説する予定です。
3 質疑応答
【講師紹介】
永沢総合法律事務所 弁護士 大野 澄子(おおの すみこ)氏
略 歴
明治大学法学部 卒業、1997年4月 弁護士登録(49期)、永沢総合法律事務所 入所
主な業務内容 保険法務
関与した主な事件
・東京地裁平成12年9月6日判決(判例時報1739号74頁)、東京高裁平成13年3月28日判決(判例タイムズ1068号174頁)
スキューバダイビングの講習会に参加した者が、スキューバダイビング中にエアエンボリズムに罹患して死亡した事故について、講習会の主催者の債務不履行責任及び使用者責任、指導者の不法行為責任がいずれも認められなかった事例
・名古屋高裁平成14年12月25日判決(自動車保険ジャーナル1482号2頁)
父親所有の乗用車で友人と深夜ドライブ中、友人と運転を交換して助手席で仮眠中に交通事故により死亡した者は自賠法3条の「他人」に該当するが、勤務終了後の深夜ドライブであるから過労運転となり危険であることをある程度予測し得たとして、1割の好意同乗減額が認められた事例
・最高裁第三小法廷平成15年12月9日判決(民集第57巻11号1887頁、判例タイムズ1143号243頁、判例時報1849号93頁)
1 火災保険契約の申込者が同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思 決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分、不適切な点があったことを理由とする慰謝料請求の可否
2 火災保険契約の申込者が同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分な点があったとしても慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべき特段の事情が存するものとはいえないとされた事例
・横浜地方裁判所平成21年9月18日判決(判例時報2099号141頁)
木造2階建店舗兼住宅の火災について、保険契約者(高齢の父親)に代わって保険契約手続をし、同居していて面倒を見ていた者の放火によるものであるとして、保険会社の故意免責の成立を認めて、保険金請求が棄却された事例
・岐阜地方裁判所平成23年3月23日判決(判例時報2110号131頁、自保ジャーナル1846号164頁)
海外旅行保険の加入者が旅行先で溺死したとして、その遺族が保険金を請求したが、加入者の死亡は旅行同行者の故意による殺人によるもので、同行者は加入者の死亡による保険金受領により利益を享受する立場にあり、請求者と同一の地位にあるから免責条項に当たるとして、請求が棄却された事例
・横浜地方裁判所横須賀支部平成23年4月25日判決(判例時報2117号124頁、自保ジャーナル1851号168頁)
保険契約者の会社建物から火災が発生した事件について、保険契約者の代表取締役による放火と認め、火災保険金請求が棄却された事例
・横浜地方裁判所相模原支部平成23年9月30日判決(自保ジャーナル1860号162頁)
修理業者が修理依頼を受けて預かり保管中の車両が盗難されたとして、自動車管理者賠償責任保険金が請求された事案について、第三者による持ち去りが推認されないとして請求が棄却された事例
・岡山地方裁判所平成24年12月19日判決(自保ジャーナル1892号178頁)、広島高等裁判所岡山支部平成25年8月9日判決(未公刊)
保険契約者所有の空き家内部から火災が発生した事件について、同人の故意による出火と認め、火災保険金請求が棄却された事例
・福井地方裁判所武生支部平成23年9月30日判決(自保ジャーナル1905号163頁)
保険契約者の代表取締役が仏壇で灯明を上げた後、庭にいる間に仏壇付近から出火した事案について、同人の故意・重過失による出火と認め、火災保険金請求が棄却された事例
・横浜地方裁判所平成25年10月11日判決(判例時報2205号117頁)、東京高等裁判所平成26年3月27日判決(未公刊)
機械加工会社の作業所の2階事務所から出火した事案について、保険契約者の代表取締役の故意による出火と認め、火災保険金請求が棄却された事例
・仙台高裁平成25年12月17日判決(判例時報2238号105頁)
深夜、無人の営業停止中の旅館(本件建物)内部から出火した事案について、保険契約者の故意による出火と認め、火災保険金請求が棄却された事例
・福岡高等裁判所平成26年1月23日判決(自保ジャーナル1921号143頁)
駐車のためにガソリンスタンドに預けていたセルシオが持ち去られ、直ちに海中に投棄され発見された事案について、第1審は被保険者の車両保険金請求を認容したが、控訴審は被保険者の故意による持ち去りを認め、第1審判決が破棄され車両保険金請求が棄却された事例
・東京地方裁判所平成26年3月24日判決(自保ジャーナル1928号169頁)、東京高等裁判所平成26年10月30日判決(未公刊)
深夜、無人の賃借飲食店(焼肉店)内部から出火した事案について、保険契約者の故意による出火と認め、火災保険金請求が棄却された事例
・大阪高裁平成27年11月13日判決(自保ジャーナル1971号168頁)
被控訴人(保険契約者)が所有する住宅街に位置する空家の一戸建住宅から、深夜、無人の状況で出火した事案において、本件火災が被控訴人の故意によって生じたものと推認し、被控訴人(原告)の請求を認容した第1審(神戸地裁姫路支部)判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した事例
・大阪高裁平成27年12月25日判決(自保ジャーナル1968号153頁)
被控訴人(保険契約者)が所有する車両(メルセデスベンツEクラス)を、周囲に民家が建ち並ぶ月極駐車場に駐車していたところ盗難されたという事案において、被控訴人(原告)の請求を認容した第1審(京都地裁)判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した事例
・福岡岡高裁平成28年6月24日判決(自保ジャーナル1985号175頁)
控訴人(保険契約者)が所有する事務所兼倉庫から、深夜、無人の状態で出火した事案において、本件火災が控訴人の故意によって生じたものと推認し、控訴人(原告)の請求を棄却した第1審(福岡地裁小倉支部)判決を支持し、控訴人の請求を棄却した事例
・仙台高等裁判所平成29年4月21日判決(自保ジャーナル2007号161頁・確定)
保険契約者(建築請負業者)の作業所において、夜間、無人の状態で出火した事案において、1審裁判所は請求を認容したが、控訴審裁判所は、不審な事情を総合考慮して、本件火災が保険契約者の故意によって生じたものと推認し、原判決を破棄し、保険契約者の請求を棄却した事例
・東京高等裁判所平成29年9月13日判決(自保ジャーナル2003号177頁・確定)
保険契約者の店舗において、深夜、無人の状態で出火した事案において、本件火災が保険契約者の故意によって生じたものと推認し、1審及び控訴審裁判所共に、保険契約者の請求を棄却した事例
・神戸地方裁判所平成29年9月8日判決(判例時報2365号84頁)
親族Xが所有する建物(本件建物)に居住していたZは、所有者がXであることを告げないまま、本件建物について保険会社Yとの間で火災保険契約を締結していたところ、Zの同居の親族Aが油を入れた鍋を火に掛けたまま放置して火災が発生したため、Xが火災保険金を請求した事案。裁判所は、損害保険契約の「被保険者」を「保険の対象の所有者であって保険証券に記載された者」であるとする保険約款を無効であるとするXの主張を排斥し、かつ本件火災は保険契約者Zの同居の親族Aの重過失により発生したと認定し、Xの請求を棄却した事例
・福岡高等裁判所平成30年5月24日判決(自保ジャーナル2038号150頁)
保険契約者・被控訴人X(法人,美術工芸品等の輸出入・販売業)の所有する事務所兼倉庫(本件建物)において、夜間、無人の状態で出火した事案において、タバコの不始末による出火か、3箇所に着火された放火かどうかが争われた事案。1審判決はXの請求を認容したが、控訴審判決は、本件火災がXの故意によって生じたものと推認し、1審判決を破棄してXの請求を棄却した事例